大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和31年(う)153号 判決

記録により確認しうる被告人の性行、経歴、前科、本件犯行の動機及び態様並びに犯行後の行状、就中被告人は昭和二十二年七月二十八日窃盗罪により懲役一年(但し三年間刑の執行猶予)昭和二十三年五月十九日同罪により懲役十月、昭和二十四年四月二十三日強盗窃盗及び住居侵入罪等により懲役八年の刑に各処せられ最後の刑については昭和三十一年四月十四日仮出獄したものであるところ仮出獄後間もない同年八月十一日早くも本件犯行を敢行したものであり而もその犯行に先ち発覚を防止する意図から手袋をして指紋を遺留することのないよう万全の注意を払う外覆面に及び且出所後間もないところから頭髪の短かいのをかくすために頭を風呂敷で覆いかくす等周到な計画をめぐらしていること、また犯罪を遂行途中被害者より発見されるや所論指摘の如く被害者方ミシン台の上にあつた鋏を右手に持ち腰に擬し「騒ぐな、騒ぐと殺すぞ」と申向けて脅迫し更に蚊帳の取手を外して被害者を覆い包み行動の自由を牽制し、また戸外には共犯者が居るよう偽装しようとして「よく見張をしてろ」とか「おいこつちへ来いよ」等話しかける等の術策を施していること、なお所論指摘の如く犯行現場に遺留した被告人のサンダルから犯行が発覚するのをおそれ犯行翌日右サンダルと同様の物を購入して使用する等綿密な犯跡隠蔽策を講じおること等に鑑みると所論指摘のとおり被告人の本件犯情については憫諒すべき情状あるものとは認めえない。此の点に関し弁護人は本件犯行の動機即ち被告人は労働によつて得る収入の殆どを母親に生活費として渡しておるのであるがその額は十分でなく従て被告人自身の小遣銭として使用し得る額も僅少であるところからこの生活費と小遣銭とを獲得する目的から本件犯行に及んだものでありこれらの事情を考慮すると十分酌量減軽すべき余地ある旨主張するけれどもかゝる事由があるからといつて本件につき酌量減軽するのは失当であると認める。此の点に関する主張は採るをえない。而して弁護人主張の諸事情を斟酌するも前述の心証を覆すに足りない。

されば原審が被告人に対し酌量減軽の上その所定刑期範囲内で懲役三年の刑を言渡したのは酌量減軽に関する法則の適用を誤つたため量刑軽きに過ぎる違法を冒すに至つたものであり破棄を免れない。論旨は理由がある。

(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 大島雷三 裁判官 松本晃平)

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